子どもの「生きる」を考える
子どもの「生きる」を考える
小児科医・作家
一般社団法人Yukuri-te
代表理事 
湯浅正太
みんなとおなじくできないよ

不安を笑い飛ばす子育て

2021/12/24

記事【不安を笑い飛ばす子育て】

絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。今回は、子どもへの関わりが、あらゆるつながりをもつ、ということをお話したいと思います。そして、不安を笑い飛ばせる子育てをしていただければ嬉しいです。

このブログ記事の内容は、Voicyでも配信しています。

【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる

強迫性障害とは

みなさんの中には、玄関のドアに鍵をかけて外出する行動を、何も思うことなく普通に行っている方が多いと思います。でも中には、自分がドアに鍵をかけたかどうか気になって仕方ないという人もいます。そういった人は、何度も何度もドアに鍵がかかっていることを確認するのです。自分でも馬鹿らしいと思っていても、そんな行為をやめたいと思っていても、やめられない。そういった人がいます。

そのように「ドアに鍵をかけたかどうか確認しないといけない」と、ある考えが何度も何度も頭に浮かび、その考えに従い行動してしまう。自分では、その考えや行為が馬鹿馬鹿しいとわかっていて、それをやめたいと思うけれどやめられない。そういった考えや行動が生活に支障をきたしてしまう。そんな病気があります。それが、強迫性障害です。

たいていそのような人は、同じような物事をいくつも経験しています。ドアに鍵をかけたかどうか以外にも、コンロの火を消したかどうか、手を洗ったかどうか。あるいは、こっちの道を通らないと縁起が悪い、といった縁起へのこだわりもあったりします。このように、生活する中で不安が強くあらわれて、色々なこだわりをもちながら生活していることが少なくありません。生きづらさを抱えて生活しているということです。

強迫性障害の原点

実はこの生きづらさは、決してその時に突然生じたものではありません。もっともっと幼い子どもの頃の経験と関係があるのです。

それは遡ること、1歳半~3歳の子どもの頃です。この時期は、自分の強い「意志」を獲得する時期なのですが、一方で、自分を信じられず不安が生じやすい心が備わってしまいかねない時期でもあります。

以前の放送でも触れたイヤイヤ期は、1歳半~3歳というこの期間にあります。第一次反抗期ともいうその時期は、自分は他人と違うんだという意識がはっきりしてきて、自我が芽生える大切な時期です。身の回りのことを自分でやれるようになるこの時期には、自己主張が強くなります。「自分でやりたい!」という意志が強くあらわれるからこそ、自分でやりたいことを制止されると、「イヤイヤ」と自己主張するようになるのです。

そういったイヤイヤ期も含む1歳半~3歳の時期。元をたどれば、そこに、強迫性障害の始まりがあるとも言われています。

大事な関わり

「自分でやりたい!」という子どもに、親が「ダメ!ダメ!」と言って、子どもの挑戦をどんどん妨げてしまう。あるいは、挑戦したけれど失敗してしまった子どもに対して、親が過度に叱ったりする。そうすると、「失敗しちゃったら、また怒られる」「自分でやっちゃダメなんだ」という気持ちを抱いて、子ども自身のやる気が育つのを妨げてしまいます。

つまり、親御さんの厳しすぎるしつけ、あるいは細かい注意により、新しいことに挑戦しようという意欲が生まれづらい心をもつようになります。そうやって、何事をするにも自分の行動に自信がもてずに、不安が強まる心が生まれてしまいます。そういった心がゆくゆく、ドアに鍵をかけたという自分の行為に自信をもてず、不安になって仕方がない、強迫性障害という心の病気を導く可能性があるのです。

そういった生きづらさを獲得しないように、1歳半~3歳の時期の関わりとして大事なこと、それは、意欲をもって物事に取り組もうとする「自律性」を育てるということです。細かい注意や、厳しいしつけではなく、あえてやらせてあげる、そういった関わりが大切です。そしてその「自律性」を育むことにより、その子の「意志」が育ちます。将来自分の「意志」をもって行動できることは、社会で生きていくうえで、その子自身を助けることにもつながるのです。

世代間のつながり

最後に、もう一つ大切なことをお伝えします。それは、親から子どもへの関わりは、実は世代間でつながるということです。強迫性障害をもつ子どもの親もまた、強迫性障害をもっていることも珍しくないのです。子どもに対して、厳しいしつけあるいは細かい注意をする親は、実は不安が生じやすい心をもっているものです。その親自身に不安が生じやすいため、自分の生活をしばっていることも少なくありません。そして、子どもの失敗への不安も避けようとして、子どもの行動をも狭めてしまうのです。

このように、子どもに不安が生まれやすい関わりというのは、次の世代、そのまた次の世代へとつながっていくのです。ですから、子どもが経験している親からの関わりを、親自身も子どもの頃に経験しているものです。自分が受けてきた関わりを、自分の子どもにもしてしまう。そういうものなのです。

子どもへの関わり方が同じであれば、その結果生じる心の状態も同じです。子どもに対する関わりは、その子自身の人生だけでつながるのではなく、実は人を越えて、世代を越えてつながるのです。人の心とは、そうやってできています。

不安のつながり笑い飛ばす

ですから、どこかの世代で、そんな不安のつながりを笑い飛ばしてください。子どもの心のカラクリを知らなければ、自分の子どもにも同じ関わりをするかもしれない。でも、今回のお話で心のカラクリが理解できれば、自分の代でその不安のつながりを絶とうと思えます。

「自分でやりたい!」という子どもには、やらせてあげてください。その子の失敗など気にせず、笑い飛ばしてしまうくらいが、ちょうどいいのかもしれません。そうやって不安の世代間連鎖を食い止めていただければと思います。

記事のポイント!

  • 1歳半~3歳に自律性を育む
  • 「自分でやりたい!」を大切に
  • 不安のつながり笑い飛ばせ

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